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おやどりことり

親鳥子鳥

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年10月~1926(大正15)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,828 字 · 181 页

青空文庫

「そんな簡単なものじゃございませんわ」

とお母さんも美容術へは行きたがっている丈けに覚えず不服を唱えた。

「美容術丈けなら郷里にもございますのよ」

と絹子さんはもう一歩進んでいる。

「その美容術の一部門、隆鼻術のことですが、皮肉なことには先生自身の鼻が並み外れて低いんです。紺屋の白袴かと訊いたら、未だ自分の鼻に応用するほど確信がないと答えました。金さえ儲かれば宜いんでしょう。まあまあ、親の授けてくれた鼻に満足しない不孝ものから罰金を徴発するんだから、一種の勧善懲悪で、道徳的な商売さと言っています」

「ひどい人ね」

「恐ろしいものです。絹子さん、あなたは活字の信者になっちゃあいけませんよ」

「何でございますの?」

「活字の信者です。活版で刷ってさえあれば何でも真正と思い込む馬鹿ものです。地方には斯ういう人がよくありますよ」

「それじゃ叔父さんのお書きになる新聞も信じられませんのね?」

「一本参りました。ハッハハハハ」

「好い気味ですわ、悪口ばかり仰有るから」

とお母さんは喜んでいた。

「新聞丈けは例外として、活字で刷ったものには随分嘘があります」

とお父さんは苦しい弁解をして、