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おやどりことり
親鳥子鳥
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年10月~1926(大正15)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,828 字 · 181 页
まさかその通りとも言えないし、安いと褒めれば今度は高くするに定っている。そこでお母さんは、
「まあ、御冗談を……」
と外した。
「実は私はこの間靴屋に仇を討たれましたよ」
「靴屋でございますか?」
「あの私の家の直ぐ側の靴屋です。彼奴はナカナカ理窟を言いますぜ。靴が大分傷みましたから、一足買う積りで、通りがかりに寄ったんです。しかし彼処はあんな小さな店でしょう? いくら探しても気に入ったのがありません。そこで『此奴は直せば未だ持つかね?』と穿いていたのを見て貰いますと、『これはもう度々お直しになりましたから手がつけられません。このまま破れるまでお穿きになった方がお為めでしょう』と申しました。『然うかな。それじゃ仕方がない』と言って私が帰ろうとすると、『先生、五十銭戴きます』と申しました。『五十銭?』『診察料です』『これは驚いた』というような次第です」
「まあまあ」
「それが本気なんですよ。『この間俺がレウマチで見て戴いた時、先生はこれは何うも手当の仕様がないから、このまま死ぬまで辛抱するんだねと仰有って、診察料を一円お取りになったでしょう?』と来ました。理の当然で一言もありません。