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おやどりことり
親鳥子鳥
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年10月~1926(大正15)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,828 字 · 181 页
忙中閑
とお父さんが訊いた。
「落語と義太夫です」
「これは有難いぞ。浩二や、お祖母さんに落語があると言って来ておくれ」
とお祖父さんは喜んだ。
忙中閑
お父さんの書斎へハガキを一枚拝借に行ったら、
――惣領の筍伸びや衣更――浩郎
という句が柱にかけてあった。墨痕鮮かだけれど、浩郎としてあるからは、お父さんだ。お父さんの字は決して巧い方でない。習字の先生が採点したら、精々乙上だろう。自分の句を柱にかけて歎賞するのでもあるまいが、お父さんの短冊掛けには時々自分の書いたものが※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)してある。これは字が拙くても習う暇のないところへ短冊を頼まれるから、度胸を養う為めの便法だそうだ。国務大臣級の人になると、相応胆力が据っているから平気で悪筆を揮うけれど、お父さんはもっと精神修養を要する。
「俺のように上達の見込のないものは自分の書を見慣れるに限る。その証拠には、女は始終鏡で見慣れているから自分の顔を然うまずい顔と思わない」
と言っている。この点は私も親譲りで、字でも絵でも大に見慣れる必要がある。殊に絵は余程見慣れないと、元来描いた目的物に見えない。