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おやどりことり
親鳥子鳥
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年10月~1926(大正15)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,828 字 · 181 页
イヨイヨ進むべき道が分ったと言って喜んでいた。して見ればこの間来たのには外の意味がある。それに芳夫さんの時にはいつも僕がお相手に呼び出されるのに、あの日に限って、お母さんは、
「源太郎や、芳夫さんだけれど、お前は宜いから彼方で勉強していらっしゃい。もう入学試験が近いんですからね」
と仰有って予め僕を遠ざけた。子供の出る幕じゃなかったのである。
もう一方絹子さんは何うかというと、一向変った徴候を示さない。その後隆鼻術と美眼術は悉皆諦めをつけて、天然自然の目鼻でお嫁に行くことに納得したようだが、歯丈け改造した。お母さんは余所の娘さんを預かっていて疵物にしては申訳がないと思ったから、一緒に山口さんへ出掛けた。山口さんはかかりつけの歯医者で、頗る剽軽な人だ。
「相変らずお忙しいようですな?」
と訊くと、
「一日立ち通しですよ。眼科の十六倍忙しい勘定です。目は二つ歯は三十二枚、そこを見越して開業したんですから、素より覚悟の前ですよ」
と答える。この先生の診察の結果、前歯二枚は何うせ長くは持たないから削り取って歯にする方が宜いと定った。それで絹子さんは山口さんへ通い始めたが、この件で僕は縁談が進捗していることを覚った。