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おやどりことり
親鳥子鳥
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年10月~1926(大正15)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,828 字 · 181 页
と早速お供をした。
「源太郎さん、私、イヨイヨ明後日帰りますのよ。随分長いこと御勉強のお邪魔をしましたわね」
と絹子さんは途々名残り惜しそうにシミジミと話し出した。
「そんなことは些っともありませんよ。あなたがお帰りになってしまうと却って勉強が出来なかろうと思います」
「何故ですの?」
「家庭教師が来なくなりますから」
と僕は日頃無意識で利用されているのでない旨を伝えてやった。
「あらまあ、随分ね」
と絹子さんは可なり利いたようだった。
「冗談は兎に角今度お出になる時は永久ですね。いつ頃ですか、式は?」
「オホホ、子供がそんなこと訊くもんじゃありませんよ」
「来年でしょう?」
と僕は態と遠いところを持ち出した。
「もっと近いのよ」
「秋?」
「もっと」
「夏?」
「ええ、当ってよ」
と絹子さんは実は言いたかったのだ。順繰りに行けば誰だって当る。
晩にはお父さんの帰るまで名代の資格で客間へ御機嫌を伺って、少時郷里のお話を承わった。
「源太郎さん、つい忘れていましたが、去年の秋は久作が上って豪い御迷惑をかけましたな」
と絹子さんのお父さんが思い出した。
「然う然う、もっと方々見せてやる積りだったが、猫に紙袋を被せたように平に辞退して逃げて行ったよ」