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おやどりことり

親鳥子鳥

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年10月~1926(大正15)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,828 字 · 181 页

青空文庫

とお父さんは説明した。僕は初老が耳へ来たと思った。

「鎌田さんに見て戴いたら如何でしょう?」

とお母さんは早速医者を薦めた。

「見て貰わなくても分っている。聞えないもの。先刻から斯うやって右の方を塞いでいると、お前と源太郎が口ばかり動かしていて面白い。活動写真のようだ」

とお父さんは万事主観的である。この論法で社説を書くのだから遣り切れない。

「暢気なことを言っていらっしゃいますのね」

「考えて見ると左の方はもう長いこと悪いのらしい。電話を億劫がるのもその所為だね。逆だとは気がつきながら識らず識らず右の方へ持って行ったもの。それでも左の耳が遠いとは思わなかった。唯電話が下手だとばかり思っていた」

「あなたは何でも然うでございますわ。御自分のことは何でも初めから好いに定めていらっしゃる」

とお母さんはこの機を利用してお父さんを啓発しようと努めた。

「初めから耳が悪いと思い込む奴もあるまいさ。中耳炎でもやったのなら兎に角。しかし驚いたよ。聾耳とは気が利かない。然うとも知らず、『おい、もっとハッキリ言え』なんて電話で人を叱ったものだ」

「お耳ばかりじゃございませんわ」