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とうくろうちそう
討九郎馳走
山本 周五郎
「内蔵允留守」成武堂、1942(昭和17)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,250 字 · 21 页
「まことに我儘な申しようではございますが、ご老職もご承知のように、わたくしは無骨者で礼儀作法に疎く、まことの野人でございまして、とても馳走番などという堅苦しいお役は勤まりかねるかと存じます」
「だからどうだと申すのだ」
「つまりその、あれでございます、その、わたくし如き者には」
「お受けはならぬというのか」
「ひらに、ひらに」討九郎は両手をおろしながら云った、「ご老職の格別のお口添えをもちまして、この儀はご免ねがえますよう、おとりなしのほど、ひらにおねがい申しまする」彼の額には汗が滲みだしていた。
「御上意にそむいてもお受けはならぬと申すのだな」
「勤まりかねるお役とわかっているものを、お受け申してあやまちを仕でかしますよりは、初めから辞退するのが至当だと存じます」
主馬は眉をひそめてじっと討九郎をみつめていたが、やがてしずかに頷いた。
「よし、ではそのように言上しよう」
討九郎は退出した。――ばかなことだと思った。おそらくなにかの間違いだろうとも思った。
兼高討九郎は五百石の番頭で、徒士組の支配をしている。年はそのとき二十六歳、まだ独身なので、方々からずいぶん縁談があるが耳もかさない。