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とうくろうちそう

討九郎馳走

山本 周五郎

「内蔵允留守」成武堂、1942(昭和17)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,250 字 · 21 页

青空文庫

五

橋、渡舟、城濠の深浅は城郭の機密である。誰がそんなことを本当に云うものか、そういう意味が討九郎の眉宇にありありとみえた。将軍家光に対してさえむざとはゆずらぬ義直も、討九郎の反問には言句に窮した。

「なかなか申すの」義直はにっと笑いながら、「役目たいぎであった、欣三郎あいてしてとらせろ」そう云って座を立った。

五

討九郎はそれから酒をしいられた。酒豪の者をそろえたとみえて、七八人いた若侍たちがいり替りたち替り相手をする。負けてはならぬと思って片はしからひきうけていたが、さすがの彼もついには泥酔し、十二時の刻を聞くころには、もうその座にいたたまれなくなった。

「もはや一滴もなりません、明日のお役がございますからこれにて」

止められるのを振り切るように、よろよろと討九郎は立ちあがった。待っていた家士たちに、左右から支えられながら外へ出ると、更けた街すじは昼をあざむく月夜だった。主従四人はおのれたちの影を踏みながら、ひっそりと寝しずまった街を半町あまり黙って歩いたが、ふと討九郎が歩をとめて、

「弥五郎、松之丞、寄れ」

と低く呼んだ。そして二人を近くまねいて口早になにごとか囁いた。