轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
とうくろうちそう
討九郎馳走
山本 周五郎
「内蔵允留守」成武堂、1942(昭和17)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,250 字 · 21 页
一
一
「しばらく、しばらくお待ち下さい」兼高討九郎はそわそわしながら急に面をあげて云った、「ただいまお達しの御意、いまいちど仰せ聞けられとうございます」
「その必要はない」老職水野主馬は、討九郎がそう云うだろうとかねて期していたようすで、あらぬ方へ眼をやりながら云った、「きたる六月より徒士組支配を免じ、馳走番仰せつけらる、それだけのことだ、わかったら退ってよろしい」
「それは、その、御上意でございますか」
「勿論のことだ」
「もしや人違いではございませんか、兼高には与右衛門もおり、玄蕃もおります、わたくしに馳走番のお達しはちと解しかねまするが」
「穏やかならぬぞ兼高」主馬は屹とふり向いた、「お上の御意を不服だと申すのか」
「もったいない、決してさようなことはございません、決してさような」
「では有難くお受けをするがよい」
「……はあ」
討九郎は手をあげて額をこすった。陽にやけた逞しい額から、横鬢のあたりを手でこすりながら、しばらく太息をついたり膝をもじもじさせていた。彼がそんなに落着かないようすを見せるのは初めてである。よっぽど去就に悩んでいたらしいが、やがて心をきめたとみえて、太い眉をぴくりとさせながら云いだした。