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とうくろうちそう

討九郎馳走

山本 周五郎

「内蔵允留守」成武堂、1942(昭和17)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,250 字 · 21 页

青空文庫

四

討九郎はその仔細を了解した。

「よく相わかりました、しかし」と彼は眉をあげて云った、「大納言家だから拙者ではお役が勤まらぬというお考えは些か合点がまいりません、たとえ御三家、御三卿、将軍家が御宿泊あそばしましょうとも、お上より仰せつけられました馳走番は拙者の役目でございます、せっかくのおはなしではございますが、お役交代はおことわり申します」そして彼は屹と口を閉じた。

四

討九郎の言句には一歩もゆずらぬ決意があった。そうなるともう説得のしようはない、源左衛門と主馬は交代を断念した、しかしこのたびだけは特にあやまちのないようにと、繰り返し念を押したのである。

数日のちに尾張家の行列が岡崎へ到着し義直は宿所へはいった。……尾州、紀州の宿泊する際は、城下町はほら貝、鐘、太鼓を禁じられる。町奉行が小頭一人足軽三人をつれて城下はずれまで出迎え、つづいて宿所へ到着の祝儀を述べに出る、そして城中から家老が馳走番をともなって伺候、家老は祝儀を言上して退去し、馳走番が残るのである。

討九郎が義直の御前へ呼ばれたのは宵の七時ごろだった。義直はそのとき四十八歳、白面の肥えた躯つきで、眦の切れあがった双眸にはげしい光りのある、英毅濶達な風貌をもっていた。