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とうくろうちそう
討九郎馳走
山本 周五郎
「内蔵允留守」成武堂、1942(昭和17)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,250 字 · 21 页
三
――万松寺どの(監物忠善の父、大阪夏の陣に殊功あり)の逸話を聞きたい。
――岡崎の槍組は評判であるがどのような調練をするか。
――御神君より拝領の兜があると聞くが拝見ねがいたい。
――監物どのは岡崎城にいちにんも婦人を置かぬと聞いておるが、事実か、事実なら側近の用に不自由と思われるがどうか。
――岡崎はかくべつ武士気質のはげしい処だというが、いったいその岡崎気質とはどのようなものか。
そういう程度の質問が多い。討九郎はいつも相手にならず、
――一向に存じません。
――わたくしには相わかりません。
たいていそんな風に答えて知らん顔をしていた。それも思いきった不愛相さで、まったく馳走番などという感じではない。一緒にゆく町奉行がたまりかねて、いくたびも注意をしたが、――拙者には拙者の勤めかたがござる、これでいけなければお役ご免をねがうより致方がござらぬ。そう云うだけで敢えて改めようとしないばかりか、さあ来いという態度さえ示すのだった。
三
夏去り、秋去り、やがて新しい春二月を迎えた。
討九郎の馳走番はともかくも無事に十月あまり続いた。そのような勤めぶりでたいした過ちも起らなかったことに就いては、彼はその主君忠善にもっと感謝しなくてはならなかったのである。