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とうくろうちそう

討九郎馳走

山本 周五郎

「内蔵允留守」成武堂、1942(昭和17)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,250 字 · 21 页

青空文庫

なぜなら、監物忠善はそのころ無双の荒大名として定評があったので、そのような風変りな馳走番が出ても、宿泊する諸侯の方で早合点をして、――また監物のいやがらせであろう、これはうっかり文句をつけると、どんな理屈でやりこめられるかも知れない、触らぬ神に祟りなし。という程に考え、わざと知らぬ顔で済ませたのである。

討九郎はむろんそんなことには気がつかなかった。彼にはいつまで経ってもその役目がつまらなくて、じぶんが馬鹿にでもなってしまいそうに思えた。だいいちはげしい野戦訓練できたえて来た五躰のふしぶしが、始終むずむずと疼くようでやりきれなかったのである。こうして二月のなかばになった一日、彼は老職の部屋へ呼ばれた。いってみるとそこには、家老の拝郷源左衛門と水野主馬とがいた。

「今日は少し相談がある」主馬がまず口を切った、「……これはお上からのお沙汰ではないが、馳走番をしばらく交代して貰いたいと思うのだ、ながくではない、この月いっぱいでよい、役目の表はそのままで休んで呉れぬか」

「むろん、そのあいだは登城に及ばず、屋敷で勝手にしていてよろしい」と源左衛門が言葉を添えた、「……承知なら今からでも下城してよいぞ」