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ろんごものがたり
論語物語
下村 湖人
「現代」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,688 字 · 266 页
「血のつながりというものは争えないものだ。」と、どうもみんなの眼が、そう云っているように思えてならない。孔子だけは、まさかとは思うが、それにしても、自分と視線が会うと、すぐ眼をそらしてしまわれるのは、どうしたわけだろう。ああ嫌だ。考えると何もかも嫌だ。いっそこのまま逃げ出して、山奥にでもはいってしまおうか、だが、そうなると、ますます疑われるだけだ。とうとう兄たちのところに帰って行った、などと思われるくらいなら、むしろみんなに足蹴にされる方がましだ。
司馬牛は、そんなことを考えているうちに、一行から一町以上もおくれてしまった。誰も彼の方をふり返らない。思いなしか、それがわざとのように思えて、彼はますます淋しい気持になる。急いで追いつこうという気がしない。
日暮に近い風が急にひえびえと襟をかすめる。――秋である。
路はゆるやかな上り坂になっていた。一行は、もう峠を越えかかっている。つぎつぎにみんなの姿がかくれて行く。その最後の一人がかくれてしまうと、彼の眼がしらが急に熱くなって、思わず涙が頬をつたった。彼は声をあげて泣きたくさえなった。
「おうい、どうしたあ――」