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ろんごものがたり
論語物語
下村 湖人
「現代」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,688 字 · 266 页
顔渕、閔子騫、冉伯牛、仲弓の四人は並んで腰を下したが、めいめいに何か考えに耽っているようだった。
孔子は少し離れたところに一人腰を下して、じっと水に見入っていた。
司馬牛は、しばらくみんなの様子を見まわしていたが、意を決したように、孔子の前に進んで行った。
孔子は彼に気づくと、静かに顔を上げて微笑した。
「先生、御心配をおかけしまして、相すみません。」
「別に工合のわるいことも無かったようじゃな。」
「いいえ、別に。……少し考えごとをしていたものですから。」
「考えごと? というと?」
孔子の顔は少し曇った。司馬牛は、あからさまに自分の悩みを打明けるつもりだったが、孔子がすでに自分の胸のうちを見すかして、批難しているような気がしたので、とっさに思いつきの質問をしてしまった。それは、彼等の間に常に使われる「君子」という言葉の意味であった。
孔子は、その質問をうけると、一寸眼をとじた。そしておもむろに答えた。
「君子は憂うることがない。また懼れることがない。」
司馬牛は、君子の説明としては、少しあっけないような気がした。しかしまた何か深い意味があるようにも思った。