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なぞのおんな
謎の女
平林 初之輔
「新青年 第一三巻第一号」1932(昭和7)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,077 字 · 18 页
二
それでも二人とも、ひどく退屈だったので、一日のうちに五度や六度、パーラーや、玉突き場で顔を合わせぬ日はなかったので、一週間あまり滞在しているうちに、自然に顔馴染になってしまった。
「貴方梅園へいらして?」
「いいえ、まだ行きません」
「ちょうど今が見頃だそうですわ」
「そうですか、じゃ見てくるかなあ」
龍之介は自然に対しては、あまり興味をもっていなかったので、梅園などちっとも見たいと思わなかった。要するに梅の木がたくさん生えて、それに花が咲いているにすぎんのだと思うと、わざわざ見物に行く気は起こらなかった。それにどんなに見に行きたいにしたところで、一人っきりで、一人っきりの女を誘うようなことはできないたちだったので、お座なりに、独り言のような調子でばつを合わせたのだった。
「いらっしゃるのだったら、あたしもおともさせていただきますわ」
「そうですね」彼には相手の返事が意外だった。それでも、ひどく退屈だったので、誘われてみると、パーラーで、新聞を隅から隅まで読み返しているよりも、外へ出た方がいくらかましなような気がした。「じゃ見てきましょうか?」
二
車の中で、二人はだまっていた。