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まけないおとこ
負けない男
佐々木 邦
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1930(昭和5)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,799 字 · 202 页
堀尾の小旦那
堀尾の小旦那
就職難といっても、その頃は世の中が今日ほど行き詰まっていなかった。未だ/\、大学即ち帝大の時代で、一手販売だったから、贅沢さえ言わなければ、新学士は何処かにはけ口があった。その証拠に、堀尾君の同期生は半数以上身の振り方が定っていた。それが卒業と共にポツ/\赴任する。○高以来六年間毎日顔を合せて来た連中も今やチリ/″\バラ/\になる。送別会が頻繁にあった。
「おい。又明日の晩あるよ」
と同じく卒業したばかりの間瀬君が堀尾君を訪れた。
「誰だい?」
「伊丹さ」
「彼奴は満鉄だったね?」
「然うさ。一番遠いんだから、特別に都合して出てやってくれ給え」
「出るには出るが、何うだね? 二三人宛束にしてやる法はなかろうか?」
「それも考えている」
「大変だろう?」
「何あに」
「いや、実際御苦労だよ」
と堀尾君は犒った。世話好きの間瀬君は○高会の幹事をしている。
「何うせ閑だもの」
「郵便じゃ間に合わないのかい?」
「遠いところは横着を極めて郵便でやるが、本郷区は廻って歩く。皆の情勢偵察かた/″\さ」
「追々片付くね」
「うむ。好くしたものさ。山下が台湾銀行へ行くよ」
「ふうむ」