轻松读懂日语经典作品
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まけないおとこ
負けない男
佐々木 邦
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1930(昭和5)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,799 字 · 202 页
元来人間は社会に尽す為め業務に従うに無之、全く自家生計の為めに御座候。生計大切に、営々として業務に従えば否応なく社会に尽すことと相成候。社会に尽さぬものが出世する筈無之、又聖人君子は除外例として、生計の苦労なきものが社会に尽す筈無之候。貴君今十万円を吝めば前途なし。十万円を捨つれば有らゆる可能性あり……」
「おや。論文になった」
と堀尾君は尚お読み続けて、
「驚いた。兄貴は財産を渡すから帰れと言う。先生はそれを貰うと駄目だと言う。両方の手紙が一緒に着いたのも不思議だ」
と呟いた。それから少時して、晩飯を運んで来た女中が、
「堀尾さん!」
と呼んだ。
「あゝ、吃驚した」
「何を考えてらしって?」
「いや、つい居睡りをしていたんだ」
と堀尾君は初めてお膳に気がついた。
「嘘」
「何うして?」
「麹町のことを考えてらしったのよ」
と女中は知っていた。
夕食後、堀尾君は奥田君を訪れた。本郷から九段上、卒業試験が済んで以来、隔日に通う。押した電鈴に応じて、
「何うぞ」
と道子さんが出迎えてくれた。
「兄さんは?」
と堀尾君はいつも玄関で訊く。見識上、奥田君に会いに来たことにしてある。