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まけないおとこ
負けない男
佐々木 邦
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1930(昭和5)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,799 字 · 202 页
「矢っ張り有る証拠だ。あの屋台骨じゃ次男坊でも叩きっ放しってことはないと思っていた」
「しかし金じゃない。僕の家は百姓だから田地だ。それも余り上等のところじゃない。君はこの正月寄って一緒に猟に行った時、小作人に頼んで、池の家鴨を打たせて貰ったことがあったね?」
「鴨だよ、あれは」
「それは何方でも構わない。場所さえ覚えていれば宜い。僕はあの池の周囲一帯を貰うことになっている。四百俵かっきりだ。一俵十円と見て四千円、十二円五十銭の五千円、十五円の六千円……」
と堀尾君は計算を暗誦しているように述べて、米の相場次第だが、金利の見積りから、先ず十万近くの財産が貰える勘定だと言った。
「成程。それじゃ落ちついている筈だよ」
と奥田君は期待以上だったので、道子さんの為めに安心した。
「いや、これからが相談だ」
「兄さんは一体幾ら貰う?」
「千五六百のところを僕に四百寄越すんだから、千二百カツカツになる」
「四分の一だね、君の分け前は。次男坊は精々五分の一だぜ。兄貴によっては六分の一、七分の一、悪くすると十分の一にも刻む」
「大体そんな相場かね」
「四分の一なら以って瞑すべしさ。