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まけないおとこ
負けない男
佐々木 邦
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1930(昭和5)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,799 字 · 202 页
「はあ」
「役人になっても会社へ入っても、天竺屋を見返してやらなければ、先祖代々へ相済みませんよ」
とお母さんは恐ろしく非論理的だ。家つき娘だから、代々村一番だった堀尾家の旗色が少しでも悪いと、狂人のようになる。正晴君は決して逆らわない。
「大丈夫です。何かやります。お父さんもお母さんも御安心下さい」
と誓うように答えた。無論何かやろうと思っている。しかし何をやるのだか、未だ方針が定っていない。
食後、尚お話し込んでいるところへ、
「小旦那さん、岩崎さんの小旦那さんがお見えになりました」
と女中が取次いだ。
「それは/\、一寸会いに行こうかと思っていたところだった」
と正晴君は直ぐに立って行った。
「やあ」
「やあ。君が帰っているとは思わなかったんだよ」
「僕もさ。今朝新聞を見て、これから行こうかと思っていたところさ」
「僕は今見て直ぐやって来たんだ」
「さあ。上り給え」
「それじゃ一寸お邪魔する。昼からの汽車で立たなければならないんだから」
と悌四郎君は隠居へ上り込んだ。
家同志は村内の両雄として勢力争いをしていても、息子同志は極く仲が好い。小学校中学校を通しての級友だったし、東京へ出てからも始終往来をしていた。