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まずしきひとびとのむれ
貧しき人々の群
宮本 百合子
「中央公論」1916(大正5)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页
動かない菰のもり上りに向って、てんでんの心は、おそるおそるささやいたのである。
十九
村中は全く混乱した。
聞くもいやらしい首縊り!
まして、あの悪い所といったら爪の垢ほどもない新さんが、そんな情ない死にようをしようとは……。
それにまた、善馬鹿まで死んだらしいというのだもの。
一体どうしたということなんだろう? こうなって見ると、こないだ中の空模様は、やっぱり凶(わる)い前兆(しらせ)だったと見えるなあ……。
皆が同じことばかりを云った。そして、思いがけないときに、思いもかけない人にとり付く死神。ときどきは自分達も狙われることがあるに違いはないおっかない死神が、今は直ぐ体の傍に近よって来ているような気がして彼等は、戸外へ出るのさえもいやがったのである。
私は、この話を聞いたとき、どうしてもほんとにされなかった。
私の知っている中で、今日までに死んでしまった人は指を折って数えるほどほかない。私が生れたときのことを知っている人は、今も私を赤ん坊のように思って可愛がっていてくれる。そして、丈夫で勢よく働いているじゃあないか?
それだのに、善も新さんも、私がほんとうに知ってからまだ二月ほか経たないのにもう死んでしまった。