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まずしきひとびとのむれ
貧しき人々の群
宮本 百合子
「中央公論」1916(大正5)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页
「もう朝だというのに。まあ何て大胆な!」
暫くすると、体は延びきりになって、小路の方へ出て来た。手には大きな丸い物を持っている。
南瓜泥棒は、歩き出した。そして、もう少しで畑から出てしまう所へ、スタスタともう一つの人影が近寄って行った。それが祖母であるのは一目で分った。
私は、ハッとした。一体何をどうしようというのだろう? 私は大急ぎで寝間着を脱いだ。そして、出て行って見ると、それはまたどうしたことだ! 私が何ともいえない心持になって、立ちどまってしまったのは、決して無理ではない。
赤地に白縞のある西洋南瓜を前にころがして、うなだれて立っているのは、かの甚助じゃあないか!
私は、自分の眼が信じられなかった。また信じたくなかったけれども、悲しい哉それは間違いようもない甚助だ。
私は、おずおず彼の顔を見た。そして、その平気らしい様子に一層びっくりしたのである。
ほんとうに何でもなさそうに彼はただ立っている。ただ頭を下げているだけなのである。
だまって、祖母の怒った顔を馬鹿にしたように上目で見ている。
私は恐ろしい心持がした。彼はそうやって立っている。