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にせもの

贋物

葛西 善蔵

「早稲田文学」1917(大正6)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,476 字 · 43 页

青空文庫

どうせ俺のような能なし者には、妻子四人という家族を背負って都会生活のできようはずがない。田舎へ帰ってきたのは当然の径路というもんだろう。よくもまあ永い間、若い才物者揃いの独身者の間に交って、惨めなばかを晒していられたものだ……」

彼はこの惣領の三つの年に、大きな腹をした細君を郷里に帰したのだ。その後またちょっと帰ってきては一人生ましたのだ。……がさて、明日からどうして自力でもってこれだけの妻子どもを養って行こうかという当は、やっぱしつかなかった。小僧事件と、「光の中を歩め」の興奮から思いついた継母の手伝いの肥料担ぎや林檎の樹の虫取りも、惣治に言われるまでもなく、なるほど自分の柄にはないことのようにも思われだした。「やっぱし弟の食客というところかなあ……」と思うほかなかった。……

二階の窓ガラス越しに、煙害騒ぎの喧ましい二本の大煙筒が、硫黄臭い煙を吐いているのがいつも眺められた。家のすぐ傍を石炭や礦石を運ぶ電車が、夜昼のかまいなく激しい音を立てて運転していた。丈の低い笹と薄のほかには生ええない周囲の山々には、雪も厚くは積もれなかった。そこらじゅうが赭く堀返されていた。