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てんき

転機

伊藤 野枝

「文明批判 第一巻第一号、第二号」1918(大正7)年1月、2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,656 字 · 67 页

青空文庫

」

「もちろんそのくらいの要求をするのは当然でしょう。じゃ、また当分のびますかな。」

「そうです。まあ一と月や二た月では極まるまいと思います。どうせそれに今播いている麦の収穫が済むまでは動けませんし。」

「そうでしょう。で、堤防を切るとか切ったとかいうのはどの辺です、その方の心配はないのですか?」

「今、丁度三ヶ所切れております。ついこの間、すぐこの先の方を切られましたので、水がはいってきて、麦も一度播いたのを、また播き直している処です。」

堤防の中の旧谷中村の土地は、彼のいう処によると二千町歩以上はあるとのことであった。彼はなお、そこに立ったままで、ポツリポツリ自分達の生活について話しつづけた。しかし彼の話には自分達がこうした境遇におかれたことについての、愚痴らしいことや未練らしいいい草は少しもなかった。彼はすべての点で自分達の置かれている境遇をよく知りつくしていた。彼は本当にしっかりしたあきらめと、決心の上に立って、これからの自分の生活をできるだけよくしようとする考えを持っているらしかった。こうしてわざわざ遠く訪ねてきた私達に対しても、彼は簡単に、取りようによっては反感を持ってでもいるような冷淡さで挨拶をしただけで、よく好意を運ぶものに対して見せたがる、ことさららしい感謝や、その他女々しい感情は少しも見せなかっ