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てんき

転機

伊藤 野枝

「文明批判 第一巻第一号、第二号」1918(大正7)年1月、2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,656 字 · 67 页

青空文庫

七

もちろん、山岡と私の間には、その話は折々繰り返された。一度はその廃村の趾を見ておきたいという私のねがいにも彼は賛成した。

ちょうど、四五日前の新聞の三面に、哀れな残留民がいよいよこの十日限りで立ち退かされるという十行ばかりの簡単な記事を私は見出した。すぐに、私の頭の中には、三四年前のM氏の話が思い出された。

「もういよいよこれが最後だろう。」

という山岡の言葉につけても、ぜひ行って見たいという私の望みは、どうしても捨てがたいものになった。とうとう、その十日が今日という日、私は山岡を促し立てて、一緒に来て貰ったのであった。

七

行く手の土手に枯木が一本しょんぼりと立っている。低く小さく見えた木は、近づくままに高く、木の形もはっきりと見えてきた。木の形から推すと、かつては大きく枝葉を茂らしていた杉の木らしい。それはこの何里四方という程な広い土地に、たった一本不思議に取り残されたような木であった。かつては、どんなに生々と、雄々しくこの平原の真ん中に突っ立っていたかと思われる、幾抱えもあるような、たくましい幹も半ばは裂けて凄ましい落雷のあとを見せ、太く延ばしたらしい枝も、大方はもぎ去られて見るかげもない残骸を、いたましくさらしている。