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うんめいのままに

運命のままに

豊島 与志雄

「黒潮 第壹卷第貳号」太陽通信社、1916(大正5)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,406 字 · 57 页

青空文庫

細面の顔を俯向けがちに、静かに口を利いた。英子がいつも空気草履を用いたのに対して、彼女は吾妻下駄をよくはいていた。

私は英子よりも寧ろ静子の方に私と相通ずる点が多くありはしないかと思うことがあった。然し私はまた静子の運命に対して少しも親しみを感じなかった。彼女も私に対して別に興味を持っていなかったらしい。

会話に拙な私は、静子と二人になるとよく一年中の季節のことなどに就いて話した。黙っているのが心苦しかったので。

「一年のうちで秋が一番私は好きです。」というようなことを私は云った。「秋になると凡てが落ちついて来ます。夏の暑さにぼやけていた心が次第に澄んできて、種々なことが考えられてきます。大空の下で大きく息をするのもいいし、一人で自分の心を見つめるのにもいいんです。……然し女の方は秋に一番心が動揺すると云いますね。」

「そんなことありませんわ。でも秋は何だか恐い時のような気がしますの。」

「春の方が恐ろしい季節ではありませんか。」

「いいえ、春は却って私は落ち付けますの。いくらかぼんやりは致していますが、それでものんびりした気持ちになりますの。秋になりますと妙にはっきりしてきて、恐いような気がします。