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うんめいのままに

運命のままに

豊島 与志雄

「黒潮 第壹卷第貳号」太陽通信社、1916(大正5)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,406 字 · 57 页

青空文庫

私は大きい力に引きずられるような気がして彼女の後についていった。

「此の節大変お痩せなすったようですね。お身体でもお悪いのでございますか。」

「いいえ別に……。」と私は答えたが自分のみじめな心が顧みらるるような気がした。その時私はかの言葉を聞いたのである。が私は落ち付いていた。否殆んどそれを予期していたような気さえしたのである。

「あなたは橋本さんをどうお考えなさいますか。」と春子さんは云った。

「どちらです。」

「お兄さんの方を。」そう云って春子さんは私の顔を見守った。

「おとなしくって、世間的の才もあるし、それに風采も立派だから……。」

私はどうしてその時そんな言葉が自分の口から出たのか知らない。然し私は欽一郎や英子の姿をその時、自分と全く没交渉のもののようにして頭に浮かべていたのである。

「実は橋本さんのお友達の方から、」と春子さんは云った、「是非英子を橋本さんの所にくれないかというお話がありましたのです。私もあの方なら別に異存はありませんが。」

「で英子さんはどう云っていられます?」

「私もそれとなく英子の心を引いてみたのですが、別に不服らしくもないように思われますので。