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うんめいのままに
運命のままに
豊島 与志雄
「黒潮 第壹卷第貳号」太陽通信社、1916(大正5)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,406 字 · 57 页
私はその午後いつものように英子を訪ねた。
彼女は少し頭が痛いと云っていた。
「それでは何処か外に出ましょうか。」
「ええ。」
そして私達は互に微笑んだ。でそれきり外に出かける問題も立ち消えになってしまった。若い愛の微笑は凡てを無解決のうちに消滅せしめてしまうことを、私達は幾度も経験していた。そして私達の心は幸福であった。
「何を考えて被居るの。」と彼女が云う。
「何にも。」と私が答える。
私は彼女の坐蒲団の上に彼女の机の前に坐るのを常とした。そして彼女は私のために出してくれた坐蒲団の上に自分で坐っていた。それは私達の熱い baiser の時から始まったのである。
その日も私は英子の机に倚りながら頼り無いような幸福の時間を過した。そして沈黙が二人の間に落つると、私はわけもなしに四五冊の雑誌の間にあった一冊の書物を手に取った。一通の小形の封書が※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)んであった。
「いけません!」と英子は叫んだ。そしていきなり私の手からそれを奪ってしまった。
私は驚いて彼女の顔を見守った。
「これは許して下さい、ね、ね。