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こんじきのし
金色の死
谷崎 潤一郎
「東京朝日新聞」1914(大正3)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,997 字 · 46 页
其頃彼は月に五六度ずつ美顔術師の許に通って、頻りと化粧に浮身を窶し、外出する時は常に水白粉をほんのり着けて、唇に薄紅さえさして居ましたが、もともと容貌が美しかったので、そんな真似をして居ようとは、誰も気が着きませんでした。
「僕はいつ何時でも自分の姿は絵になって居ると信じて居る。」
こう彼は傲語して居ました。あのような服装をして其れが少しも突飛に思われないのは、全く岡村君の気品の然らしむる所で、到底他人の企及し難い事であると、私も密に感服しました。況んや岡村君の遊びに行く新橋や柳橋や赤坂辺の芸者達が、盛んに彼を崇拝したのも無理のない話です。
「君のような生活を送って居たら、もう再び学校なんぞへ這入るのは嫌になるだろう。」
私がこう云って尋ねると、彼は頻りに冠を振って、
「いやそんな事はない。僕は決して学問の値打ちを軽蔑する事は出来ない。君にはまだ僕の性質がほんとうに分って居ないのだろう。」
と答えました。それでも私は内々疑って居ましたが、いつの間に彼は数学を習って居たものか、明くる年の夏には見事優等の成績で一高へ入学して了いました。私はます/\感服しました。