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こんじきのし
金色の死
谷崎 潤一郎
「東京朝日新聞」1914(大正3)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,997 字 · 46 页
六
六
少くとも学問の点に於て、私は岡村君に負けてはならないと云う気が始終あったのです。其上自分は貧窮な学生であると云う事が刺戟になって、私は激しい神経衰弱に陥る程無我夢中の勉強を続けました。私の頬は痩せ、血色は青褪め、見るから哀れな、うら淋しい姿になりました。私は、偉大なる芸術家になるには、先ずどうしても十分に哲学を研究しなければ駄目だと思い、覚束ない独逸語の力でニイチェやショオペンハウエルを一生懸命に読み耽りました。其結果、安本のレクラムの細かい活字にあてられて、私は忽ち度の強い近眼になって了いました。
「本を読む事は大切だ。しかしそれよりも完全な眼を持つ方が一層大切だ。」と云って、岡村君は決して活字の細かい書物を読もうとはしませんでした。彼は学校で独逸語の教師から教わって居るラオコオンの十四章のページを開いて、私の前に突きつけながらこんな事を云いました。
「眼の事で思い出したが、レッシングと云う男は何だか虫の好かない人間だね。君、こゝに斯う云う文章があるだろう。――― Aber m※(ダイエレシス付きU小文字)sste, solange ich das leibliche Auge h※(ダイエレシス付きA小文字)tte, die Sph※(ダイエレシス付きA小文字)re desselben auch die