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こんじきのし
金色の死
谷崎 潤一郎
「東京朝日新聞」1914(大正3)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,997 字 · 46 页
いかに美しい詩歌でも絵画でも、多少の意味を持って居ないものはない。之に反してピアノにしろヴァイオリンにしろ、総ての楽器から出て来る音響には全く意味と云うものがない。音響は考える事が出来ない。唯美しいと感ずるばかりである。其の点に於て音楽程芸術の趣旨に適ったものはないと云えるのだ。」
「そのくらいなら、君は音楽家になったらいゝじゃないか。」
「ところが不幸にして、僕の耳は僕の眼のように発達して居ないから、音響に依る美感と云うものをそれ程強く感受する事が出来ない。音楽は美感を人に起させる形式に於いて優れて居るけれど、美感そのものゝ内容に至っては何だか稀薄なように思われる。だから僕の最も理想的な芸術と云えば、眼で見た美しさを成る可く音楽的な方法で描写する事にあるんだ。」
「そんなむずかしい事が出来るつもりなのかい。」
「出来ないまでも努力して見ようと思うのさ。―――そこで又レッシングの攻撃に戻るが、ラオコオンの眼目とも云うべきものは、要するに詩の範囲と絵の範囲とを制限した以下の二つの文章に帰着して居る。曰く『絵画は事物の共存状態を構図とするが故に、或る動作の唯一瞬間をのみ捕捉する事を得。