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こんじきのし

金色の死

谷崎 潤一郎

「東京朝日新聞」1914(大正3)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,997 字 · 46 页

青空文庫

ラオコオンが嘆いて居ようが、叫んで居ようが、乃至血だらけになって呻いて居ようが、其の瞬間の肉体美さえ十分に現れて居れば沢山なんだ。」

「すると芸術を翫賞するのには、想像力なんか不必要になるじゃないか。」

「そうだとも、―――一体僕は想像と云うような歯痒い事は大嫌いだ。何でもハッキリと自分の前に実現されて、眼で見たり、手で触ったり、耳で聞いたりする事の出来る美しさでなければ承知が出来ない。想像の余地のない、アーク燈の光で射られるような激しい美感を味わなければ気が済まない。」

「そう云う議論は、造形美術にはあて嵌まるかも知れないけれど、詩だの小説だのには応用出来ない話じゃないか。」

「応用するのは非常にむずかしいかも知れないが、しかしまるきり出来ない事はないだろうと思う。元来僕がもう少し手先の器用な人間であったら、文学なんかやらないで絵かきか彫刻家になるところだった。けれども僕には文章を作る才能だけしかないのだから已むを得ない。兎に角何等かの形式で、文章を以て絵画や彫刻の表現するものと同一の美を取扱って見たい。果してどんな物が出来上るか、今のところでは自分にもよく分らないが、レッシングの云うような『詩は事物の進行的状態を描写する。