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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

124 唖娘

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,006 字 · 25 页

青空文庫

四

それは二十二三の中年増で、色の浅黒い、目鼻立ちの整った申分のない美女が、横顔を見せて逃げるように立去ったのです。

「これはどうも、へッ、へッ、へッ」

ガラッ八はすっかり恐悦してしまいました。先刻門から入った痣の娘も、今の中年増もこの家の者だとすると、全く妙なところへ飛び込んでしまったことになります。

四

「八、近頃は火吹竹の稽古だそうだな」

平次は早くもそれを聴き込んだ様子でした。

「へッ、変なことになりましたよ、親分」

「何が変なんだ。その火吹竹の師匠には、綺麗な妹が二人もあるというじゃないか、さぞ八五郎の稽古も精が出ることだろう」

「そんなわけじゃありませんがね」

ガラッ八は照れ臭く耳の後ろばかり掻いております。

「尋常に申上げた方がいいぜ。また変なのに引っかかると、叔母さんの心配の種だから」

「そんな怪しげなのじゃありませんよ。間違いもなく大店の若隠居が、道楽に尺八の師匠をしているんで、竹名は竹斎というが、本名は山城屋滝三郎というんだそうですよ」

「山城屋滝三郎? 店はどこだ」

「大坂で」

「なんだ上方の衆か、上方訛りはあるかい」

「ありませんよ。江戸の水が恋しくって、弟に世帯を譲ってこっちへ来たというくらいだから」