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ながさきのかね
長崎の鐘
永井 隆
「長崎の鐘」日比谷出版、1949(昭和24)年1月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,109 字 · 131 页
長崎の浦上あたりの上空に一点の白雲があらわれ、それが横のほうへも上のほうへも、ものすごい勢いでむくむくむくむくと膨張してゆくではないか。「なんだ、なんだ」と騒いでいるうちに直径一キロ以上のふくれた饅頭ができた。そのとき、だあーんと爆風が到達し、職員室は震駭し、皆はばらばらと硝子片を引きかむった。
「爆弾投下、校舎に命中、退避」田川先生はこう叫んで、そのまま裏山の防空壕へ飛びこんでしまった。そして、ちょうどこの時刻に浦上の自宅では、妻と子供たちが自分の名を呼びながら息絶えつつあることを神ならぬ身の知る由もなく、田川先生は、ぽつねんと冷たい土の中に座っていた。
大山という地区は長崎港の南、八郎岳の山腹にあって、浦上から八キロ離れている。ここから望むと、浦上の盆地は長崎港のさらに向こうにうっすら霞んで見える。加藤君は牛をつれて草原に出ていた。ぴかりを見たのは、緑の中に草苺の光るのを見つけて一つ二つ頬ばったところだった。びっくりして牛も首をあげた。浦上の空に白い、濃い濃い綿のような雲が生まれ、ぐいぐいと大きくなる。その色はちょうど提灯を綿につつんだようで、外のほうは白かったが、中には燃える赤い火を含んでいた。