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ながさきのかね

長崎の鐘

永井 隆

「長崎の鐘」日比谷出版、1949(昭和24)年1月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,109 字 · 131 页

青空文庫

「そうです、認めます。何も知らない学徒が最後まで正々堂々自己の本分を尽くし、救護という人類愛に基づく本務に殉じた事実は、国家の運命と関係なく美しいものです」

「そして大学は一切の力を失いました。物的にいえば建物はあのとおり文字どおりの廃墟です。人的にいえば大多数を死なしめ、生き残った私たちもこのとおりの状態になっています。私の家も、財産も、妻も、すべては、なくなりました。私は一切の力を失った者です。完全に力を出し尽くして、しかも負けたのです。これがどうして残念といわれましょう。なんの遺憾があります? 私たちの現在の心境は、むしろ雨後の月みたいです。負けて悔いなき戦でした」

「そう聞けば、私たちは恥ずかしい気がします」

「もし私に家も財産も妻もそのまま残っていて降伏になったのだったら、私は今どんなにか苦しいでしょう。これこそ国家に対し、戦災同胞に対して大きな負担ではないでしょうか? 国家が滅びると同時に私の家もなくなり、国が破産すると同時に私も無一物となったと思えば、悲しみの中にむしろすがすがしい気が湧いてきます」

「しかし世間には、反対に戦争成金で朝晩喜び騒いでいる階級がたくさんあります」