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ながさきのかね
長崎の鐘
永井 隆
「長崎の鐘」日比谷出版、1949(昭和24)年1月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,109 字 · 131 页
長老。
「うん、そうかもしれん。急に気温が下がったごたる」史郎が考え考えいう。
「太陽が爆発したら、世界はどうなります?」
椿山看護婦がおろおろ声で尋ねた。
「地球も終わりさ」長老がぼっさり答えた。みんな黙って待っているが、やっぱり明るくならない。一分たった。闇の中で時計の秒を刻む音が印象深い。
「それで、ひるめしはどうする?」史郎。
「さっき食っちまったさ。お前持っとるか?」
長老がこの世の名残りに一口食いたそうにいう。
「うん、死なぬうちに分けて食おうや」
すると汽車がトンネルを出る時のように、あたりが静かになりながらすうと明るくなって、長老の白い歯が見え、史郎の長い鼻が見え、椿山のちっちゃいえくぼも見えてきて、「ああ、太陽は大丈夫だったんだなあ」と史郎がいい、「しかし昼飯は分けておくれよ」と長老がいって、三人は窮屈な卓の下から、硝子の粉、機械の断片、椅子の残骸、電線の網の中へはいだしてきた。
「いったいどこへ落ちたんだろう? これだけ壊すにはこの室に命中しなきゃならんはずだが、天井に孔もあいとらん」
「爆弾の落下音を聞いたかい?」
「いや聞かなかった」
「それじゃ……空中爆雷かしら?」