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ながさきのかね

長崎の鐘

永井 隆

「長崎の鐘」日比谷出版、1949(昭和24)年1月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,109 字 · 131 页

青空文庫

と叫んだ。五人はそこに転がっていたバケツを拾うなり水槽へ我おくれじと駆けだした。旧レントゲン教室の疎開跡のまだ材木を片づけていない広場は、まだ炎のたけは低いけれども一面火の海である。五人はかねて防空演習でやりつけたとおり、一方の隅からバケツの水をぶっかけ始めた。しかし火の手はここばかりではなかった。病院の廊下はすっかり吹きとんで跡形もなく、食堂も潰れて一面に火を噴いている。残っているのはぽつんぽつんとコンクリートの病棟ばかり。木造の建物はすべてなくなって、その代わりに炎がたっている。しばらく水をかけていたが、消える面積よりは燃えひろがるほうが速い。とてもバケツ注水では間にあわぬという見通しがついた。

「機械を取り出そう」史郎がいった。

「負傷者の手当てをしよう」と長老がいう。

「入院患者を避難させましょう」と椿山がいう。

炎はみるみる黒煙をあげて大火になる勢いを見せる。

「部長先生の指揮を受けましょう」と久松婦長がいった。

そこへ橋本君があらわれた。

「部長先生が生き埋め」皆顔をみ合わせる。

「まあ、あんげん太かとば、どんげんするえ?」と小さい椿山がもらした。