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ながさきのかね
長崎の鐘
永井 隆
「長崎の鐘」日比谷出版、1949(昭和24)年1月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,109 字 · 131 页
「あーあっ」先生は深い溜息をつき、村山君の冷えゆく裸身を土の上に横たえ、合掌して、次の荒木君の上にしゃがんだ。荒木君は南瓜のようにぶくぶくに膨れ上がり、ところどころ皮のはげた顔の中に、細い白い眼をみひらいて、「先生、やられました」と静かにいった。「もう駄目らしいです。お世話になりました」
耳と鼻から血の流れ出ているのがある。頭蓋底をやられて即死らしい。よほど強く地面に叩きつけられたのだろう。口から血泡を吹いているのもある。富田君がその間を水をのませ、言葉をかけつつ、敏捷に立ち回っている。自分の力で動ける者は独りもいない。まだ呻いているからこの学生の次に行って診てやろうと思っているうち、急に黙ったと思ってひょいと見ると、もう目玉を白くひっくり返してしまう。こうして二十人ばかり次々と息絶えていった。二人ではとても救護はできぬ。誰か加勢をしてくれないだろうかと、清木先生は、「おーい、誰か来てくれ!」と北を向いて叫び、東を向いて叫び、西に向かって呼んでみた。じっと耳をすましていると、大気はいまだ安定を回復していないものとみえて、方向の定まらぬ突風が時の間をおいてごーっと吹き回り、その風の音にまじって、そこらのおし潰された屋根の下から、声を限りに助けを求めているのが聞こえる。