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ようきなきゃく
陽気な客
山本 周五郎
「苦楽」苦楽社、1949(昭和24)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,086 字 · 46 页
おれはひどく酔うとたびたび天青の家へ泊ったもんだった。電車がなくなって、兵庫辺りから夜更けの道を歩いていったことも珍しくはなかった。その途中に家並がとぎれて空地つづきになったところがある、右も左も荒れた草原で、いかにも場末らしくやたらに紙屑だの空罐だのの塵芥が汚ならしく捨ててあるんだ。とうてい浮いた気持になれる景色じゃないんだが、そこへもってきてコスモスがずらっと咲いていた。横さまにみんな倒れている、倒れたまま咲いているのや倒れたところから起き上がって咲いているのや、実にしだらもない乱離たるありさまなんだが、こいつが道に沿ってどこまでも咲いているには降参した。……こっちは酔い痺れてうらがなしくなって、だからこそつけ元気でやけくそな歌をうたったり傲慢なことを喚いたりしているんだ。それこそ破滅的な気分でいるところなんじゃないか、そこへ星あかりの暗がりからぼうっとほの白くコスモスの花がみえてくる。……捨てちらしてある塵芥、紙屑、そしてほの白くしんと、どこまでも続いて咲いているコスモス。……花には特別の罪はないのかもしれないがおれはこいつだけにはどうしたってシャッポを脱がずにはいられない。