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ようきなきゃく

陽気な客

山本 周五郎

「苦楽」苦楽社、1949(昭和24)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,086 字 · 46 页

青空文庫

七

そしてその頭を下方へさげてはおじぎをし、またおじぎをしては懇篤な調子で云っていた。

「月給だって減らしてもいいんです。酒を節することは断じて約束します、なんだったら禁酒しようかと思っていました、じっさいこれでは自分ながらあいそがつきますから」

「そらあんたの好きにしなはれ、こっちゃはいんで貰いさえしたら酒を飲もうと飲むまいと知ったこっちゃあれへん」

ああなんと、天青も馘になったんだ。

「ぼくは雑誌を今の倍くらい売れるプランを持っているんですが、ぼくはもっと書きます、雑誌一冊ぜんぶぼくが書いてもいいんです、いま面白い記事があるんで、こいつはあっと読者にうけることまちがいなしですが、……社長、お願いです、お願いします、どうかもう少し面倒をみてやって下さい、お願いします」

ああいたましいおれは胸が潰れる。天青はその頭を下方へさげておじぎをしているじゃないか、雑誌を一冊分ぜんぶひとりで書くとまで壮烈な気持になってるじゃないか。おれはなにものかに対して怒りたく思った。

七

「もうやめときなはれ、ほして今日のうち引取って貰わなあきまへんで」

「待って下さい社長、もうひと言、ぼくはこれまで御厄介になった恩義からしても、このままお別れするには忍びない気持です、まだ御恩返しもしてはいませんですし、社長、お願いします、このとおり」