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ようきなきゃく

陽気な客

山本 周五郎

「苦楽」苦楽社、1949(昭和24)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,086 字 · 46 页

青空文庫

四

非難というよりはまあおべっかみた様なものさ、仲井さんほどの人がこんな所に埋もれている法はないどうして貴方はこんなふうに韜晦しているのであるか。……まあそんなようなことをしかも熱情をこめたみたようにならべたてたんだ。すると主筆は少しばかり蒼くなってきた顔をあげ、唇のまわりを手でひっ擦りながら云った。

「君はいつからおれだということを見ぬいていたんだ」

「貴方をですか、……それは、見ぬいたといったって」

「おれが仲井天青だということをさ、いつから見ぬいていたんだえ」

四

――おれは当惑にうたれた。わけがわからなかった。だって仲井天青などという名まえがなにを意味するか、全然まるっきり見当がつかなかったからだ。……人間が狡猾にたちまわるということは一般的には美徳とは云えないんだろう、おれとしても心構えとしてはそう思うんだが。……その時はおれは狡猾にたちまわった、それについては責任を回避しやしない、おれは恥ずかしいと思う。が、結果としてはおれはひそかに一日一善であると今でも信じているんだ。

「ぼくはうれしい、そうか、きみは覚えていてくれたんだな、そうか、ぼくはうれしい、ぼくもまだそれ程には忘れられてはいないんだな」