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ようきなきゃく

陽気な客

山本 周五郎

「苦楽」苦楽社、1949(昭和24)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,086 字 · 46 页

青空文庫

「はあ、はあ、きみ、やったなあ」こう云ったもんだった。

「やりましたねえ」

「やったなあ。きみ、やったなあ」

それから彼はけらけら笑いだした。おれも笑いはしたようだが、彼は笑いが止らないくらいで、しまいには拳骨で腹を押え、涙をぽろぽろこぼしたくらい笑った。そうしてやがておちつくと、手の甲で涙を拭きながらまじめな口ぶりになって云いだした。

「結局はこのほうがいいんだよ、きみ、人間はふんぎりをつける時が大切だ、ふんぎるんだよきみ、あんな穢らわしい腐った空気の中にいてはこっちまで堕落してしまう、……このほうがよかったんだ、寧ろ祝うべきなんだ」天青はそこでちょっと眼をすぼめたが、矢庭に立上がって拳を前方へ出しながら叫んだ。

「飲もうきみ、こんな汚ならしい金は一銭も残らず遣い捨ててやるんだ」

「飲みましょう、仲井さんの新しい出発を祝いましょう」

おれたちは飲みまわった。といったところでおれの月給はいろいろな勘定を差引かれているからたいしてはない、天青のも件の如しというくらいだったんだろうさ。だから始めのうちはできるだけ勘定で飲んだもんだが、それでも単なるやけ飲みというだけではなかった、酔うにしたがってそこは精神は昂揚した。