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ようきなきゃく

陽気な客

山本 周五郎

「苦楽」苦楽社、1949(昭和24)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,086 字 · 46 页

青空文庫

八

――兵庫の「安楽」という小さな酒場を逐い出されたのが最後だった。午前二時に近いような時間だったと思うが。

――思う存分に飲んだわけさ。

――おれたちは星あかりの暗い道を歩いていた。ときどき歌もうたった。天青はよろけてばかりいた。二度ばかりへどをついたように思う……おれは彼を抱くようにして、彼といっしょによろけよろけ歩いた。おそろしく寒い風がうしろから吹きつけてきた。電線がひゅうひゅう鳴りアスファルトの道の上を紙屑がころげて来て、そうしておれたちを追い越して、向うのほうまでころげていったりした。

八

「きみちょっと、ちょっと休ませてくれ」

天青はこう云って、もう家がまぢかになったところで立停り、道の脇の枯草の上へ腰をおろしてしまった。

「もうすぐですよ仲井さん、そこがもう四つ角ですよ」

「いやだめだ、帰れない」天青はぐらっと頭を垂れて呻いた。

「ぼくが負ってってあげましょう、こんなところでなにしていては風邪をひきますから、ねえ仲井さん立って下さい」

「きみは構わずいってくれたまえ、ぼくは帰れないんだ、家へは帰れないんだよ、きみ」

「どうしてです、なぜ帰れないんですか」