轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ゆきのうえのしも
雪の上の霜
山本 周五郎
「面白倶楽部」光文社、1952(昭和27)年3月~4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,586 字 · 50 页
おちぶれてはいるが人品が違うし、躯もぬきんでているから、客のほうで誤解するらしい。こちらで呼びかけると、急に怯えたような顔になり、返辞もせずに駆けだす者があった。初めのうちはしばしばあった。また次には、親切な気持からして呉れる、と思うのだろう、たいそう恐縮して、途中もなにかと鄭重に話しかける。しょうばいのことや、時候気象のことや、不良な伜のことや、そのほか各種多様なことについて。……伊兵衛はもちまえの気のやさしさと、なにごとにも丁寧な性分から、相手よりもなお慇懃な態度で、熱心にあいづちを打ち、おどろいてみせ、感じ入り、適度に反対したり、あいそ笑いをしたりする。そうして、峠を一つ越えて仲山という宿へ着くと、相手は荷物を受取って、篤く礼を述べていってしまうのである。
――まことにおなごり惜しい。
などと云うが、伊兵衛としても、まさか駄賃を呉れとは云えない。こちらもなごり惜しいような心持で、また次の客を物色する。といったような例もずいぶんあった。
むろんそんなことばかりはなかったし、馴れれば調子もわかるから、十日ばかりするうちには、どうやら少しは稼ぎになるようになった。