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ゆきのうえのしも

雪の上の霜

山本 周五郎

「面白倶楽部」光文社、1952(昭和27)年3月~4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,586 字 · 50 页

青空文庫

七

侍は肌付きの金を持っているのが作法でもある。どうしてももってゆけと云うので、彼はやむを得ず、それをまたふところへしまった。

「ではまた二十日に来ますからね」

「こちらは大丈夫でございますから、月が変ってからでも結構でございますわ」

おたよは気丈に云って微笑した。

七

その戻り道のことであるが、伊兵衛は妙なことに気がついた。というのは、十歳前後の子供たち、(女の子もいた)が、まえに彼のやっていたように、旅客の荷持ちをしているのである。峠へかかるまでに、往く者と来る者で五人もあった。なかには相当に重そうな荷を、うんうんといって背負ってゆく者もある。

――やあ、だいぶおれの後輩ができたな。

こう思って、ちょっと頬笑ましく、嬉しいような気持になった。彼の性分として、こういうときに黙ってはいられない。同じ年ごろの少年が二人、重そうな荷物を背負ってゆくのを見て、にこにこしながら声をかけた。

「やあ、えらいな坊やたち、重たいか」

その荷物の主だろう。三十五六の、商人ふうの旅人が、こっちを見た。伊兵衛はあいそよく笑って話しかけた。

「ついこのあいだまで、私もこの仕事をやっていましてね、仕事というほどのものじゃありませんが、今はやめましたけれども、こういう子供たちを見ると、仲間のような気持がするんですよ」