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ゆきこんじゃくものがたり

雪今昔物語

中谷 宇吉郎

「自然」1947(昭和22)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,695 字 · 32 页

青空文庫

一三

旅費のことなども心配しなくてもいい。本部の方で扱いましょう」という話であった。

打合わせがすっかり済んで、十月の末にお伺いするはずになっていたところ、止むを得ぬ事情のために、一月ばかりおくれて、十一月の末になってようやく上京の運びになった。途中狩太の研究所へ立ち寄ったら、戦時研究時代から世話になった吉村のおばさんが、大変喜んで、赤飯をたいてくれた。

一三

東宮殿下は小金井の東宮職の中に起居され、学習院の生徒たちと同じ教育を受けておられる。中等科の一年生としての一般教育は普通どおりに受けられ、その上ヴァイニング夫人の英語をはじめ、いろいろな人の進講をお受けになるので、相当重い御負担のようである。それでも非常にお元気で、丈夫にすくすくと御成長になっているように拝せられた。

広い武蔵野の平野を見渡す一隅に、二千六百年記念式に使用された建物の一つを移し、その中の一部が殿下の御教育に使われている。寒いがらんとした広い部屋が、御進講の間である。そこでお待ちしていると、学習院の制服姿の殿下は、元気な足取りで、さっさっとはいって来られた。そしてお椅子の前にちゃんと直立されて「遠いところをわざわざ御苦労でした」