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ゆきこんじゃくものがたり

雪今昔物語

中谷 宇吉郎

「自然」1947(昭和22)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,695 字 · 32 页

青空文庫

一七

その時代でも、その晩某侯爵邸に招かれた時の方が、御馳走といい調度といい、昼の御賜餐の十倍くらい立派であった。もっともその侯爵邸の晩餐でも、ロンドンのサヴォイホテルの普通の晩餐程度のもので、そう格別に驚くほどのことでもなかったのである。

侍従の方たちと、お茶をいただきながら、今度上京の途中で赤飯をたいて祝ってくれたところがあったが、その人たちにこういう話をしたら驚くことでしょうという話をした。そうしたら「地方ではまだそういう人があるのでしょうかね」と、その中の一人が感慨深そうに洩らされた。その語調には、むしろ私が意外に思うほど沈んだひびきがあった。

一七

御進講は午後二時からであった。天皇陛下は茶の背広を召され、皇后陛下はよく新聞の写真などで拝見する古風なお服であった。両陛下御並びで御座につかれた。晴れた明るい日であったが、明室映写幕は非常によく写った。七十枚の幻燈を全部使って、十年来の研究の結果をくわしく御説明申し上げたが、最後まで御興深げにおきき頂いたので、大変有難く思った。

御進講がすんでから、その席で紅茶とビスケットとを頂戴しながら、宮内大臣や侍従長なども御一緒で、補足的なお話を申し上げた。