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ゆき
雪
中谷 宇吉郎
「雪」1938(昭和13)年 11月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,536 字 · 152 页
しかし色々やっているうちに、それは手の温みによる輻射熱と手で温められた空気の対流とによることが分ったので、手袋をはめることによって難なく解決された。手袋を、手から出る温みを遮断するために用いるのはちょっと面白いが、考えて見るまでもなくすべての防寒具の目的とするところは結局同じことなのである。
手袋をはめると仕事は益※(二の字点、1-2-22)面倒になる。暫くやっているうちに、いくら外套をきこんでいても何時の間にか身体がすっかり冷え込んで、気がついて見ると足は小刻みにコンクリートの上をとんとんと踏んでいる。慌てて暖い室へ逃げ帰って、スチームの放熱器に腰をかけて暖まるのである。
こんな騒ぎをしてやっと顕微鏡写真をとることは出来たのであるが、今になってその頃の写真をとり出して見ると随分下手な写真である。それでも初めて現像して見て、結晶の像が出て来た時はとても嬉しくて、濡れた乾板を持って同僚の友人の所へ見せに行ったのであるから、随分滑稽な話であった。そんな事をしているうちに最初の年の冬は明けてしまったのであるが、その一冬の間毎日のように雪の降る度にこうして撮った写真を集めて見るとかなりの蒐集が自然に出来上った。