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ゆき

雪

中谷 宇吉郎

「雪」1938(昭和13)年 11月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,536 字 · 152 页

青空文庫

五

」更に「同じ時代の都のおとめだちが、明るい電燈の下で、はなやかに骨牌を切っておることも知らず、……農村の娘だちは、掌から血を流して毎日藁を打っておるのだ。

さればといって

稲舂けば皸る我が手を今宵もか殿の稚子が取りて嘆かむ(万葉集巻十四、東歌)

の古代の娘のように、今日の農村の娘だちには可愛がってくれる若い殿子もいないのである。」と述べている。

かくの如く農民の労力から得られる賃銀は甚しく少いのであるが、その窮乏の村民から集めた金で村の財政をまかなう村役場の役人が、小学校の雪下ろしに多額の金を支出することを嘆くのは、実に当然のことと言わねばならない。何百年の昔、否東北に人間の住み始めてからこの方、かかる嘆きが年毎に繰返されていることを人々は銘記しなければならない。

いうまでもなく、雪国の人々は、その環境に適応した生活様式を永い間に整えている。しかしそれらは何ら科学的研究を基礎としていない。ただ経験によってあみ出された対策であるから、進歩は遅く、しかも自然の猛威に対しては全く消極的な防禦に止まらざるを得ないのである。

五

「積雪地方農村経済調査所」においては、この屋根の雪下ろしということについても研究を行っている。