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ゆき

雪

中谷 宇吉郎

「雪」1938(昭和13)年 11月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,536 字 · 152 页

青空文庫

第二 「雪の結晶」雑話

一

これは決して夢のような話ではない。人間はもっともっと困難な多くの自然現象とたたかい、それを研究して、征服しつつあるのに、雪についてまだ多くの研究がされないのは何故であろうか。少数の学者の研究が如何に進んでも、その研究が一般の人に普及されなければその真価を発揮したことにはならぬ。また研究というものは多くの人に諒解され、利用されて、人々の注意が集って更に新しい段階に入ることが出来るのである。今日我国において最も緊急なことは、何事をするにも、正しい科学的精神と態度とをもって為すことが必要であるということであろう。これは何回繰返して言っても過ぎることはないであろうと思われる。

第二 「雪の結晶」雑話

一

雪の結晶は誰が最初にその姿を正しく認識したであろうか。そして、その後どのような歴史をもって今日に及んでいるか。今その大略をここに述べて見よう。そうしてこの歴史を調べることによっても今更に感ずるのは、如何に自然の秘められたる工は深く、人智によるその認識が遅々としているかということなのである。

雪の結晶を初めて認識した人はアルベルタス・マグヌスで、一二五〇年代のことである。