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ふうりゅうばけものやしき

風流化物屋敷

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1947(昭和22)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,228 字 · 40 页

青空文庫

午飯になると市中の「古梅亭」という料理屋から酒を付けて食事が届いた。なにしろだいぶみんなで奔走してくれたが、奉公人がとんと無かった、当時は三月が奉公人の出替りと定っていたので、季節はずれにはなかなか無いものだ、それでも柘榴屋敷でなければ二人や三人都合のつかないわけはない。給銀を倍にして前払いでやっと承知をしたのが権八ひとりで、それも「親が病気で臥ているから夜だけ看病にゆかせて貰う」という条件つきであった。仕方がなく権八は自分の食事を作るとして、平之助は誰かみつかるまで料理屋から運ばせることにしたのである。……午飯を食べると彼は横になった。片付けに来た権八がみると酒に手がつけてない、「これは召上らねえのでござりますか」「うん――」「おげこでおいでなさるんでござりますか」「なにどこへもゆきあしないよ」「いえ御酒はお嗜なみやあしゃらねえのでござりますか」「酒か、うん、――酒は飲まない」旦那はこう仰しゃった、「酒を飲むと酔っていけない、詰らないもんだ」「へえご尤も、ではこのまま」権八はごくっと喉を鳴らして膳部を下げていった。平之助は半刻ばかりうとうとした、午飯の後のひと眠りは少年時代からの重要な日課で、それをしないと夜の寝つきが悪いのだそうである。